目次
序章:プロレス大賞とは何か
1974年、東京スポーツ新聞社が創設した「プロレス大賞」。
それは単なる賞ではなく、**一年を戦い抜いたレスラーたちの“魂の記録”**だ。
MVP、ベストバウト、タッグ賞、敢闘賞、技能賞、女子プロ大賞など、
日本のプロレス界の“顔”を決める栄誉とともに、業界全体の流れを映し出してきた。
1970年代:創設と黄金期の到来
プロレス大賞の幕開けは1974年。
初代MVPは、言わずと知れたアントニオ猪木。
「ストロング小林との異種格闘技戦」は当時社会現象となり、
この時代、プロレスは「最強を競うリアルファイト」として国民的人気を誇った。
もう一方の巨塔・ジャイアント馬場もベストバウトを量産。
全日本と新日本が“二大巨頭”として並び立ち、
この時代のプロレス大賞はまさに“黄金の両翼”だった。
1980年代:長州・鶴田・天龍、三強時代
1980年代は団体抗争と個の時代の始まり。
長州力の革命軍、ジャンボ鶴田のエース時代、天龍源一郎の天龍革命。
リング上では団体の看板を背負い、観客の感情を爆発させる戦いが繰り広げられた。
タイガーマスク(初代)の登場もこの時代。
“空中戦革命”として少年たちの心を奪い、女子ではダンプ松本 vs ライオネス飛鳥が社会現象に。
「女子プロレス大賞」が定着し始めたのもこの頃だ。
1990年代:団体抗争と個の時代
バブル崩壊の裏で、リングはさらに熱くなった。
全日では「四天王プロレス」が確立。三沢光晴、川田利明、小橋建太、田上明。
一方の新日本では武藤敬司、蝶野正洋、橋本真也の「闘魂三銃士」が躍動した。
1990年代のプロレス大賞は、“技術と物語の融合”。
1990年の大仁田厚 vs ターザン後藤(電流爆破)はデスマッチ文化の象徴。
この時代、MVPの意味は「時代を変えた男」へと進化した。
2000年代:混沌からの再生期
2000年代、業界は再編の嵐。
NOAH設立、PRIDEブーム、総合格闘技との交差——。
プロレスは試練の時代を迎えるが、その中で輝いたのが武藤敬司と小橋建太。
彼らは“プロレスの誇り”を守り抜き、観客の信頼を再び取り戻した。
一方、女子プロは一時低迷。
しかし後にスターダム、仙女といった新世代団体が芽吹き始める。
女子プロ大賞も再び注目を集める礎となった。
2010年代:新日本の黄金期と世界進出
オカダ・カズチカの時代、そして内藤哲也の時代。
2010年代は「新日本プロレスの黄金時代」と呼ばれる。
2012〜2020の約8年間、MVPとベストバウトはほぼ新日本勢が独占。
オカダ vs ケニー・オメガ、内藤 vs オカダなど、
世界レベルの試合が立て続けに選ばれ、海外メディアでも称賛された。
女子では紫雷イオ、世志琥、里村明衣子らが受賞。
男子・女子問わず、「プロレスは再び世界へ羽ばたくエンターテインメント」となった。
2020年代:多団体化と女子プロの復権
2020年代、コロナ禍を経てもリングの灯は消えなかった。
オンライン配信やサブスク文化により、
ファンの応援は“会場から画面越し”へと進化した。
2024年には外国人選手ザック・セイバーJr.がMVP。
2002年のボブ・サップ以来、実に22年ぶりの快挙。
女子部門ではSareeeが女子プロ大賞を受賞し、
日本女子プロレスが再び世界の注目を集めた年となった。
MVP・ベストバウト・女子プロ大賞 年表(1974〜2025)
| 年 | MVP | 年間最高試合(ベストバウト) | 女子プロ大賞(※併設年) |
|---|---|---|---|
| 1974 | アントニオ猪木 | 猪木 vs ストロング小林 | – |
| 1982 | タイガーマスク(初代) | 馬場&鶴田 vs ファンクス | ダンプ松本 |
| 1989 | 長州力 | 長州力 vs 天龍源一郎 | 北斗晶 |
| 1990 | 大仁田厚 | 大仁田厚 vs ターザン後藤(電流爆破) | アジャ・コング |
| 1998 | 三沢光晴 | 三沢光晴 vs 川田利明 | 井上京子 |
| 2003 | 小橋建太 | 小橋建太 vs 秋山準 | 浜田文子 |
| 2008 | 武藤敬司 | 丸藤正道 vs 近藤修司 | 里村明衣子 |
| 2012 | オカダ・カズチカ | 棚橋弘至 vs オカダ・カズチカ | 紫雷イオ |
| 2015 | オカダ・カズチカ | 天龍源一郎 vs オカダ・カズチカ | 長与千種 |
| 2017 | 内藤哲也 | オカダ・カズチカ vs ケニー・オメガ | 岩谷麻優 |
| 2019 | オカダ・カズチカ | オカダ・カズチカ vs SANADA | 林下詩美 |
| 2022 | 内藤哲也 | 鷹木信悟 vs ウィル・オスプレイ | ジュリア |
| 2024 | ザック・セイバーJr. | 辻陽太 vs 後藤洋央紀(NEW JAPAN CUP 決勝) | Sareee |
| 2025 | (未発表) | (発表待ち) | (発表待ち) |
総括:プロレス大賞が映す「時代の物語」
プロレス大賞とは、リング上の栄光の記録であると同時に、
「時代そのものを映す鏡」でもある。
猪木と馬場がいた時代、
長州が革命を起こし、三沢が魂を燃やし、
オカダが新しい黄金期を築いた。
そしていま、女子も再び主役の座へ。
Sareee、岩谷麻優、里村明衣子——
その名は、未来のプロレス史にも必ず刻まれていく。
出典・参考リンク
東京スポーツ「プロレス大賞」公式サイト
Wikipedia:プロレス大賞(歴代MVP)
Kakutolog プロレス大賞まとめ
東スポWEB 各年授賞式記事



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